ミックス/マスタリング解説(ドラム編)
前回に引き続きミックスの解説をしていきたいと思います。参考音源はこちらです。
今回はドラム編ということなのですが, 多くの方はドラムのミックスが一番苦手なのではないかなと思います。「分離感を良くしようとするとスカスカになる...」「キックとベースがぶつかって団子になってしまう...」あるあるですよね。僕も非常に苦手でしたので沢山のサイトや解説動画を見て勉強しましたし, 今でも試行錯誤の毎日です。この記事が少しでも参考になれば幸いです。
それでは行きましょう。まずはキックからです。
音作りコンプ(V-Comp)→EQ(Air EQ)→音を太くするコンプ(UAD 1176)→アタック感を調節する(NI Transient master)
【代替案】
V-Comp→Q10→Rcomp→各種コンプ(Transient masterに変わる奴は無いかもです...)
V-Compの音, 良いですよね。僕大好きです。キックのアタック感が出る上に締まりを良くして抜ける感じが得られるのでよく使います。特に設定はいじらず挿すだけです。お手軽ですね。
次にEQです。僕はバラードではベースを下, キックを上にして低音の安定感を出し, テンポの速い曲ではキックを下, ベースを上にしてリズム感を出します。今回はバラードなのでキックが上ですね。前回の表を見て頂くとキックのメインの音域は110-200Hzなのでそこをブーストし, ベースとぶつかる110Hz以下は削っています。あと400Hzらへんを中心にQ広めでカットするとスネアやボーカルとのかぶりも防げるので思い切ってカットしましょう。キック単体で聞くと音が細くなる感じがしますが, 混ぜた時にはこれくらいがちょうどいいです。後はビーター音を出したいので6kHz辺りを少しブーストします。
V-Compはアタック感がかなり強くなる分少し音が細くなります。なのでもう一段コンプをかけてやって太さを調節していきます。アタック最速, リリース最速, レシオ1:8で音の出だしだけを潰します。「太くすると奥行きが無くなるんじゃないの?」と思いがちですが意外と太くした方が奥行きが出たりします。
Transient masterなのですが一種のチートプラグインです。その名の通りトランジェントを変えるものなのですがサスティン(音の長さ)を少し短くするとタイトで存在感のあるキックが作れます。このタイトさは他のプラグインで出すのは結構難しいのでキックのミックスで悩んでるのであれば購入をおススメします。
次はスネアです。
EQ(Air EQ)→アタック感を調節する(NI Transient master)→ダイナミックEQ(waves F6)→太さを足すコンプ(waves H-Comp)→へばりつき感を出すコンプ(RComp)
【代替案】
Q10→各種コンプ→C6→H-Comp→RComp
最初はEQで他の楽器とぶつかる音域を削っていきます。スネアは音域がぶつかりやすく処理が難しいのでいつも悩みます。ハイパスとローシェルフでキック, ベースと被るとこをカット。メインの200-300Hzをブーストして挟むようにカット。3kHzで削っているのはボーカルとぶつかるところです。スネアを目立たせようと思うとハイをブーストしたくなるのですがむしろハイを削った方が聞こえやすくなることが多いです。ローパスでがっつりハイをカットすることもしばしばです。
Transient masterではサスティンを少し短くしてタイトさを出しています。スネアは余韻が長いとボーカルとぶつかって掻き消えてしまうのでゲートなりを使って余韻を切るのが良いかなと。
次に新しく出てきたのがF6なのですがダイナミックEQといってマルチバンドコンプEQverみたいなもんです。マルチバンドコンプより細かく調節できるので重宝しています。これで出過ぎた音域をリリース長めで潰すとべチャッと感が出て奥行きを作れます。ここでは150Hzらへんを強めに潰すことでキックとの分離をしつつ腰の据わった低音を作っています。
H-Compはパラレルコンプレッション用に色んなトラックで使っています。がっつり潰した音を少し混ぜることで太さと奥行きを出しています。
最後のRCompなのですがこれはおまけです。「なんか少し曲から浮いてて安定感ないな~」と思ったのでアタック40ms, リリース5ms, レシオ1:3で潰して曲にへばりつけたような音を作っています。この柔らかくへばりつく感じはRCompにしか出せないのでとても便利です。
あと画像にはないのですがボーカルにも使っていたホールリバーブをセンドで薄くかけています。「パーカッション類にリバーブ?」と思われる方もいると思いますが侮ることなかれ。薄くかけることで音が明るくなりますし何より曲の奥の方でスネアがなっている感じがでて奥行きが出せます。Transient masterで元音の余韻を切って, リバーブで更に奥で鳴らすことでボーカルとぶつかることなく余韻を足せます。僕のスネアのポイントです。
さてさてお次はハイハットです。
EQ(Air EQ)→コンプ(UAD 1176)→ディエッサーです。
【代替案】
Q10→RComp→ディエッサー
バッサリとハイパスで低音を削ってメインの5k-6kをブースト, 挟みカットです。正直ハイハットはあんまりいじらないです。
コンプはアタック遅め, リリース最速で音を前に出す感じですね。スティックでハットを叩いた瞬間の音が出て来るところを探してアタックを調節していきます。
最後にディエッサーを5.8kHzに結構深めにかけています。ここが僕なりのポイントなのですが目立出せたい高音をディエッサーで潰すと他のウワモノやボーカルより少し後ろで鳴らせるので, ぶつかりを防ぐこともできますし, 曲全体の音量を上げていったときに耳に痛くならないので音圧を稼ぎやすくなります。「音圧が上がらないよ~」と悩んでる方の原因は結構ハイハットやシンバルの高音域が強すぎて耳に痛くなり, 結局音量を上げていけないというのが多い気がします。なのでマスタリングを見直す前に金物系のミックスを見直すと改善できるかもしれません。
次にシンバルです。
EQ(Air EQ)→コンプ(UAD 1176)→マルチバンドコンプ(Pro-MB)
【代替案】
Q10→RComp→C6
EQはボーカルとハイハットとぶつかるところを削る!!以上!!
コンプは余韻を長くしたかったのでリリース最速, リリース長めにしてしっかりと潰しています。シンバルの余韻を長くすると高音域の奥行きが出ますし曲全体のリッチ感が増します。逆に言うとシンバルがしょぼいと曲全体が安っぽくなっちゃいます。
マルチバンドコンプはハイハットのディエッサーと同じ役割ですね。ちょっと中音域も潰して存在感を増しています。
後はホールリバーブをセンドでかけています。割と深めにかけてもシンバルはいい結果になることが多いです。
最後にシェイカーです。
EQ(Air EQ)→コンプ(UAD 1176)→ディエッサーです。
【代替案】
Q10→RComp→ディエッサー
はい, ご覧の通りハイハットといっしょですね。ハイハットより少し上で鳴らしたかったのでハイシェルフで超高音域をブーストしています。あとはハイハットと被らないように少し削ったらOKです。
以上がドラム編でした。ここから更にドラムトラックをまとめてステムで処理をすることが多いのですが, 今回は各トラックで好きな音が作れたのでやっていません。また機会があればその記事も書こうかなと思います。
次はピアノ編になります。