top of page

歌ってみたのミックス解説

 どうも, さぶろうです。今回の記事では僕の「歌ってみた」のミックスについて解説していこうと思います。

参考音源はこちらになります「コバルトメモリーズ うたってみた*涼花」。涼花さんご協力ありがとうございました。

 さて, ニコニコ動画やYOU TUBE等には沢山の歌ってみた動画が投稿されていますが, 時々見つける「ミックスがもう少し良ければな...」「何か惜しい気がする...」というコメント。歌声や歌うテクニックとは別の部分で損しているのは非常に残念ですよね。そもそも聴きやすいミックスと聴きにくいミックスの違いは一体何なのでしょう?

 僕はこの二つを分けるポイントは「3つ」あると思います。

① 声の音量がバラバラで聴こえないところとうるさい所がある

② 迫力を出そうとして低音中音域がモコモコしている or 抜けを良くしようとし過ぎてスカスカになっている

③ 残響が多すぎる or 少なすぎる

 ここから先は画像を用いながら, これらの3つのポイントについて説明を進めて行こうと思います。まずはメインパートの解説です。

音量を揃えるコンプ( MV2)→アタック感を出すコンプ(LA-2A)→音作りEQ(NEVE 1073)→EQ(Q10)

→ディエッサー→音量調整(Vocal Rider)

 上であげた三つの問題を解決するために注意すべきなのは①コンプ ②EQ ③ディレイ&リバーブです。

 まずは①コンプのお話。個人的に歌ってみたミックスはここが一番大切になるんじゃないかなと思ってます。

 僕は音量を揃えるために wavesのMV2を使っています。最初にオートメーションを書いておいて書き出しなおすというのも手なのですが, MV2は手軽にできちゃうので重宝しています。右のフェーダーを下げるとスレッショルドを超えた音を潰してくれる(いわゆるコンプの働き)のですが, 他のコンプと違うのは左のフェーダーを上げると小さな音を底上げして大きくしてくれることです。上から潰し, 下から持ち上げる。サンドイッチみたいな感じですね。すると大きな音を沢山潰さなくても音量を揃えられるので音質の変化も防げます。MV2を持っていないという方は最初にオートメーションで小さな音をざっくりと音量を上げておき, その後コンプをかけることで同じ効果が得られます。

 次にアタック感を得るためのコンプです。「声を前に出してくるのはEQの高音の働きだ」と思われがちなのですがむしろこっちのコンプの方が重要です。アタック50msくらい, リリース50msくらい, レシオ1:4, ゲインリダクション, ピーク時に4dbくらいで軽く潰すと, 声の最初がはっきりとして前の方に出てきて, 更に歌詞も聞き取りやすくなります。結構ここで神経を使うのがゲインリダクションの量で, あまり潰し過ぎると声が細くなるので注意しましょう。

 よく歌うときの感情表現として声を小さくする, 大きくするというのがありますが, 結局その音量のバラツキをそのままにしておくと, いわゆる聴きにくいミックスになってしまいます。

 「感情表現は音の音量差で作るものではなく音の密度で作るもの」というのが持論です。密度はどう変えればいいかというとコンプでの潰れ具合です。一番盛り上がるところでもコンプやリミッターで決めた最大音量の天井が守られつつ, コンプのかかりが少ない所で落ち着きを表現するのが良いかと。とはいえ音量の差も多少つけたいところなので, それは最後のオートメーション書きで表現しましょう。

 次に②EQのお話。まずは音作りです。音作りで最も気にしなければならないのはオケと声の相性です。軽やかな曲なのに低音バリバリの重たい声にしたり, 重低音響くEDMで軽い声にすると何か違和感が出てきますよね。いわゆる「オケから浮く」という現象です。特に前者は違和感が凄いです。今回の曲, はるまきごはんさんのコバルトブルーは軽く跳ねる感じなので割と軽めのボーカルを目指しています。80Hzまでハイパスを入れ, 220Hzを1dbブースト, 4-8kHzを2dbブースト, ハイシェルフで超高音をブーストしています。女性ボーカルなのでもともと音域は高音寄りだったのでそこまで低音のカットはしていません。男性ボーカルであれば220Hzのブーストはやめた方がいいかと。4-8kHzと超高音をブーストすることで声のざらつき感と抜けを作っています。やり過ぎるとキンキンしてくるので3db以内におさめておきます。

 音作りが終わったらオケとかぶっている音を削ってスッキリさせていきます。まだ低音がもやもやしていたので120Hzまでハイパスをかけ, 補正で180Hzを少し上げています。次に600-800Hzを2.5dbほど削っています。ベースのアタックと被ったので1800Hz, キックのアタック被りで3200Hzを削っています。

 ここでポイントとなるのが中音域ですね。声を太くしようと中音域を多めに残しているとボワボワとして垢抜けない声になってしまいます。意外と低音と高音をメインとして中音域を削るような処理をするといい感じになることが多いです。

 歯擦音を抑えるディエッサーと最終的な音量調整でVocal Riderを入れています。Vocal Riderは結構便利なプラグインなので興味がある方は是非。

 ③ディレイ&リバーブのお話。また新しい画像があるのでご覧下さい。

ディレイ(H-delay)→ルームリバーブ(True verb)→プレートリバーブ(Rverb)→ホールリバーブ(RC48)+EQ

ディレイは特別なことがない限りテンポシンクして8分です。残響多めの曲なのでフィードバックは28ですかね。ディレイをかけすぎると摩訶不思議空間になってしまうのでうっすらと影がつくくらいでかけます。後で詳しい話が出てくるのですが, 僕は空間系のセンド量に結構オートメーションを書いています。AメロやBメロでは少な目, サビでは多めです。ここに差をつけることでサビでの声の厚みを増せます。

また, ディレイを更にプレートリバーブにセンドで送って混ぜています。こうすると残響音の輪郭がぼやけてオケへの馴染みが良くなります。はっきりと聞こえるディレイ音は目的を持って使うとき以外はなるべく避けてます。

 僕は基本的にリバーブは2~3種類混ぜて使うのが好きです。ルーム系でオケになじませて, プレートで残響音作り, ホール系で奥行作りです。設定に関しては正直プリセットに頼っています。サイズやリバーブタイムを感覚的にいじりますがやっぱり空間系は苦手です。レントリリーのミックス解説(ボーカル編)でもお話しましたが, リバーブの後にEQを入れるのは本当におススメです。リバーブが上手くいかない悩みが一発で解決することもあります。

 さて, 次はコーラス編です。基本的な処理はメインと同じなのでポイントを絞って解説します。

 今回ハモリが3本 , コーラスが3本があるのですが音分けをするためにEQで工夫をしています。めっちゃ簡単です。一本ごとに違う欲しい音域を決めてその両端をカットするだけです。これで十分差別化できます。わかりやすいように画像では3本並べてみました。

 これでメインパートとコーラスパートが完成したわけですがここで問題が発生します。

「オケと混ぜたときめっちゃ音ぶつかる」

 いくら各パートで頑張っても空間系とか全部混ぜていくとぶつかりますよね。当たり前です。元々ミクちゃんが歌うために用意されたオケなんですからミクちゃんが歌うための場所しか用意されていません。その時は「はるまきごはんさんゴメンなさい」と謝りつつ今回のボーカルに合うようにオケをEQで削ります。削ったのが下の画像です。

 ここまで来たらマスタリング!!...といきたいところなのですが, こっからが歌ってみたミックスの正念場です。オートメーション書きです。かなりしんどい作業なのですがここを怠ると一気にクオリティ下がりますから頑張りどころです。

 今回オートメーションは上から音量, ディレイセンド, プレートリバーブセンド, ホールリバーブセンドの4本です。

 音量はここまでで結構追い込んできたのであまりいじらなくて済んでいます。Vocal Rider様様です。単純にサビの音量を上げたり, ちょっと大きいなと感じた所を下げています。

ディレイセンドやリバーブセンドは③でも言いましたがA,Bメロでは少な目, サビでは多めです。ポンッと下がったり上がったりしているところは特殊効果的な使い方ですね。実際に音源聞いていただけたらわかるとおもいます。ディレイもリバーブも切ったドライな声の方が良い所。残響をたっぷりにして不思議空間を作った方が良い所を作るとメリハリがついて飽きがきにくいのでおススメです。過度なアレンジはあまりいい顔をされませんが, 多少ならOKだと思います。(はるまきごはんさんはきっとこれくらいでは怒らないと信じてる)

 最後にマスタリングです。

マルチバンドコンプ(OZONE7)→ステレオイメージャー(OZONE7)→テープシミュレーター(slate digital VTM)→コンプ(VBC)→MS処理EQ×2(Pro-Q2, bx-digital v2)→マキシマイザー(invisible Limiter)

マスタリングの細かい内容についてはレントリリーのマスタリング解説記事で詳しい話をしているのでそちらを見て頂ければなと思います。(大体同じプラグインで同じ事しているので)

 マルチバンドコンプで出過ぎた音域を潰し, ステレオイメージャーでほんの少し高音域を広げています。全体的に明るい音にしたかったのでテープシミュレーターを追加し, コンプでアタック感を出す。MSEQで広がりと奥行きを出しつつ最終調整といった感じです。最後のマキシマイザーなのですが, 配布されているオケが2mixの場合は結構突っ込んでも大丈夫ですがマスタリング済みの音源の場合は突っ込むとすぐ音割れを起こすので注意しましょう。

 ということで歌ってみたミックス解説でした。質問や感想などがあればTwitterのリプ欄にお願いします。他にもたくさん記事書いてるのでそちらも参考にしていただければなと思います。それでは!!

Featured Posts
後でもう一度お試しください
記事が公開されると、ここに表示されます。
Recent Posts
Search By Tags
まだタグはありません。
Follow Us
  • Facebook Long Shadow
  • Twitter Long Shadow
  • SoundCloud Long Shadow
bottom of page