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音量差の大きいボーカルのミックス

 今回はボーカルの音量差を小さくする処理に焦点を当てていきたいと思います。歌ってみたなどのミックスをする上で必ずぶつかる壁として音量差が大きい音源との格闘があります。僕はボカロ曲のミックスが主なのであまり音量差が大きいボーカルを扱うことはないですが、やはりたまに歌ってみたミックスするときにはまず音量差をどうするかを考えますね。

 ボーカルの方が感情を込めて歌うとどうしても音量差はできます。仕方ないことです。ボーカル側で何とかしようとサビの時だけマイクから遠ざかって歌う方がたまにいらっしゃいますが、音の密度が変わってむしろミックスしにくくなるのでここはミキサーの方に任せておくのが吉かと思います。

 では早速処理の方を解説していきます。各処理ごとにどんな変化があるかわかりやすいようにバウンスして比較していきます。また凡庸性を高めるためにwaves縛りでいきます。まず元音源の波形です

 Aメロとサビでかなりの音量差がありますね。また、アタックが強すぎるため波形が大きくギザギザしています。

 音量差を小さくすると聞いてまず思い浮かぶのはコンプレッサーだと思います。しかしコンプレッサーで潰すと少なからず音が変化したり、最悪の場合音割れを起こすこともあります。また、音量が大きい所のみにコンプが反応してしまうこともあります。なので僕はまずオートメーションを軽く書いて、あらかじめ音量差を少し小さくしています(下の画像)

 初めの段階からしっかりとオートメーションを書くのは正直しんどいのでざっくりです。メロダインで音程、タイミング補正をしてオートメーションで音量を整えるまでがミックスの前段階です。書き出した音源が下になります。

 大分音量差がましになりましたね。これくらいの差であればコンプに入れても問題ないと思うのでここからはプラグインを使っていきます。

 まず気になるのがぴょこぴょこと波形がピーキーに飛び出しているところです。ここはスパッと切っておきたいのでリミッターを使って潰します。ポイントはガッツリ潰すのではなく大きく飛び出しているところを撫でるように潰すことです。

 また、wavesのMV2を使って小さな音を持ち上げます。このプラグインは大きな音を潰すのではなく小さな音を持ち上げるので音の変化が少なく、音量差を小さくするのに最適です。この二つの処理をしたのがこちら↓

 リミッターを使うことで音の上限が決まり、MV2によって音量差が縮まりました。波形もちょっと太くなりましたね。

 次ですが、ぴょこっと波形が飛び出ているところの多くはサ行タ行などの歯擦音です。そのためディエッサーを使うことで抑えられます。どこを抑えるかですが、女性ボーカルであれば5.8kHz, 11.6kHz辺りにそれぞれかけています。リダクションは歯擦音が出たときにだけ10db程かかるように設定しています。細かいところはアナライザーを見ながらです。

 ここでコンプレッサー登場です。アタック感を出しながら音量差も整えていきます。アタック50ms, リリース最速レシオ3:1, リダクション3dbくらいでかけます。

 上の画像と比べるとアタックが強調されてのっぺり感がなくなっています。オケに混ぜたときに上の画像の状態では埋もれてしまうのでこのコンプがとても大事です。また、小さな音が持ち上がって更に波形が太くなっています。声にパワーが出てきますね。

 最後にダメ押しですがwaves vocal Rider をかけます。このプラグインが音を潰すのではなくフェーダーを上げ下げすることで音量を調整します。アタックも程よく出てきて音量差も小さくできる優れものです。

 上の画像よりも更にギュッと詰まり、アタックもギザギザと強調されているのが分ります。ただこのプラグインあまりにも音量差が大きいときに使うと不自然な音量変化になるのである程度整えてから使う方が良いかと思います。

 では最後にまとめです。最初の音源と完成した音源を比較してみましょう

 いい感じの仕上がりですね。この後にオートメーションを書いてAメロとサビに強弱をつけたり、盛り上がり、フェードアウトなどの表現をつけていきます。

工程をまとめると

①オートメーションでざっくりと音量を整えて書き出し

②リミッターで特に飛び出しているところを切る

③MV2で小さい音を持ち上げる

④ディエッサーで歯擦音を抑える

⑤アタック遅めのコンプでアタックを強調

⑥Vocal Riderで最終調整

⑦オートメーションで表現づけ

 オケの音数が多いものであればオケに負けないように波形を太くしていきますが、ピアノのみアコギのみなどの場合はあえて音量差を大きく残したりもします。どのくらい音量差を小さくするかはケースバイケースですね。音を持ち上げていくと低音~中音がモコモコとしてくるのでEQで削るのもお忘れなく。

 以上音量差の大きいボーカルの処理でした~。今回の記事はTwitterでフォロワーさんからリクエストをいただいて書いたものなのですが、テーマを頂けるのはとても助かりますのでどしどしTwitterの方でリクエストしていただければと思います!それでは~

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